皆、人の子だ

犯人に告ぐ

犯人に告ぐ

劇場型犯罪」に「劇場型捜査」で立ち向かう警察小説。


タイトルや煽りからして、マスコミと警察と犯人のダイナミックな騙し騙されの捕り物劇、という先入観で読み始めたのだが、どうやらキモはそこではなかった。
劇中の人々の繊細な心の動きや強さ弱さ、凶悪な犯罪というものに係わる者、巻き込まれた者の人間らしく人間臭いふるまいが丁寧に書かれた作品だった。
なので少し肩透かしを食らったような気持ちにはなったが、犯罪者とて皆と同じ人間なのだ、何か特別な存在だと思っていては目が曇る、という訴えかけや、巻島のストイックさや津田の暖かさ、植草のダメっぷり(笑)などはどれも実に人間らしく、面白かった。


作者の雫石氏の得意分野(?)は「家族愛」なのらしい。
それを先に知っていたら、もう少し正しい着眼点で読めたかもしれないと思う。
そして「小説としては優れていると思うけど、『ミステリー』としてはどうだろう?」という気もした。 でも「このミス」1位。