いつから。

テレビで「となりのトトロ」を見る。
恐らく30越えてからは最初の見返し。


それまでは何の気なしに見ていたのに。


トトロが笹に包んでお土産にくれた木の実。
サツキとメイが庭に植えたけどなかなか芽が出ない。
するとある夜トトロがやってきて、木の実を植えた周りを踊る。 サツキとメイも踊る。
トトロがうーんと力を込めると、ぽぽんっと芽が出る。
サツキとメイも力を込める。 ぽぽぽんっと芽が出る。
背伸びをするとどんどん大きくなる、大樹になる―――。


このシーンになった途端。 ぶわーっと涙が出た。
ほんとーに何も考えてなかったのに。


ずっと以前に読んだ新井素子のエッセイを、今でも覚えている。
となりのトトロを見た。 トトロのくれた木の実が芽を出すシーン、気がつくと泣いていた。
私は一体いつ『こちら側』に来てしまったのだろう」


確かこれを読んだ時は20代中ごろだったと思う。
その近辺でトトロを見返しもしたはずだけど、「あー、やっぱそうなるよねぇ」ぐらいにしか思わなかった。


いや。
私はまだ、トトロ達と一緒に、背伸びをしていたのだ。


そして今日。
私は「泣く側」に回ってしまっていた。


一体いつ、こちら側に来てしまったのだろう。
その境界はどこなのだろう。
そこを越えて私は何かを失って、何かを得たのだろうか。


ねこバスの代わりに、私は何が見えるようになった?