Brave Story

kashmi_r2005-01-28

ふと省みるに、最近この日記のタイトルが真でなくなっている。
読んだ本とかお話書きのことばっかりで、FFが半分どころじゃなく4分の1ぐらいになってる。
とはいえ単なるニッキにするのはプライドが許さないので見て見ぬフリ。 何でだ。

ブレイブ・ストーリー(上)

ブレイブ・ストーリー(上)

上下巻ともに読了。
宮部みゆきのゲーム好きが如何なく発揮された、基本に忠実な、でもだからこそ心踊る作品。


ワタルが幻界に入るまでの現実世界のパートが長いという感想が結構見受けられたが、私はそうは思わない。
現実世界で起こった様々な辛い出来事。 それに完膚なきまでに叩きのめされたからこそ、その運命を変える為に彼は幻界に乗り込むのだから。


ワタルの(あるいは人間達の)インナースペースであるところの幻界。 登場するのはトカゲ人間、ネコミミっ娘、勇者の剣にドラゴン達。
正直に言って、ドラクエ・FFあたりから始まるRPG世界の遺伝子を持つ人種にこそ訴える数々の「お約束」が各所にちりばめられていて、読者がその遺伝子を持つか持たないかで楽しみ方はかなり異なると思う。 が。


そんな世界をがむしゃらに乗り越え、仲間と出会い、別れ、自分の中にもあった一筋縄では行かない「現実」に直面して懊悩する彼の姿が、ストーリーが進むにつれ前述のような「ゲーム的ムード」を乗り越えて生々しく伝わってくる。
そして、そんな旅の果てに、ワタルが変えたいと望んだものは「運命」ではなかった。


聞けば聞くほどお約束で、それで結局どうなのよと思われる向きもあるだろうが。
分厚い下巻の最後のページを読み終わって本を閉じ、ふぅっと溜息をついた後。
本を置こうとした私の手が、開かなかった。
手放したくなかった。 別れたくなかった。 この世界と。


一年ぐらい経って、細かいストーリーが完全に記憶の表層から抜け落ちた頃に、また読みたいと思う。