三宅島

kashmi_r2005-01-31

三宅島への帰島が始まったらしい。


未だ火山ガスがたなびき、灰と石が地表を覆う三宅島。 だがそれは地上の話だ。
たった5年、人が立ち入らなかっただけの三宅の海。 そこはまさに「南の島」の豊かさを取り戻していた。


南からの海流が暖かく海を洗い、運ばれてきた魚の卵や海草が芽吹き。
避難前は透明度も低く魚の影もうっそうと寂しげだった水際は、今や波消しブロックの隙間に大きな伊勢海老が鈴なりに住まい、色とりどりの熱帯魚が群れをなして閃き、神経質なはずのウミガメが優雅にたゆたう青緑色の楽園だ。


三宅島への帰島が始まったらしい。


島の周りの海が、全てそうなったという訳ではない。
地表に積もった火山灰などが流れ込む海域に潜れば、その光景は岩と黒い砂だけの、さながら賽の河原だ。
水が動く度に砂が舞い上がり、亡霊のように海底を這い回る。
しかし、透明度は高い。


その海域に流れ込む川に、土石流などを止める処理がなされていない事がその「原因」らしい。
アナウンサーの声がかぶる。
「この海域に再び生き物を取り戻す為には、土石流の流入を食い止める作業が早急に必要です」


土石流を取り除いた後に、再度流入するものがあるはずだ。


黒い海底の映像を、噴火前の海底の映像に。
「土石流」を「人間」に。


「この海域に再び生き物を取り戻す為には、土石流の流入を食い止める作業が早急に必要です」


人間の流入が食い止められた海の美しさは、賽の河原よりも哀しく、儚く映った。


三宅島の人々は、帰るだろう。
あそこが彼らの故郷だ。 大手を振って、笑顔で帰ってほしい。
彼らと、彼ら以外の人々が、手分けして「原状回復」に努めるだろう。
彼らに必要なものを揃えていくだろう。 必要とされないものは姿を消していくだろう。


そこが、彼らの故郷だ。
私達の三宅島だ。