長い道程の始まりです

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

読了。
シリーズ最新刊が出ている中、あえて最旧巻(笑)
だって最近読み始めたんだからしょーがないジャマイカ


何しろ目を引くのは、「ぼく」と玖渚友の間の、近いようで不透明な距離感。
見たまんま、読んだまんまであるはずがないのは、本書の中に数ある張られっぱなしの伏線(笑)からも明白だけれど。
常に自分の感情からも一歩引いて物を見ている「ぼく」と、そこに無邪気になついてくる玖渚友。
何と言うか、己の術中に自らハマってなおかつそれを自覚しながら足掻く若者の浮遊感のようなものが。 頭脳と精神のアンバランスが。 もう何を言っているのか私は。


そしてころころと転がされる言葉達が面白い。
作者の持つ怒涛の雑学(笑)が登場人物の間で事あるごとにやりとりされるわけだが、言うなればそれが下りの坂道を背中をけとばされつつまろび走るような、するすると頭に流れ込む文章で垂れ流される。
小理屈のはずなのにいまひとつ理屈くさくなく、その知識の全体像を把握した上で一言でサクっと言い表されている軽快さがそこかしこにあり。 それがまた「戯言」の一端でもあるのかなーとか。


形態としてはミステリーで、その仕掛け自体はそこそこなのだが。
何を以って、何がミステリーなのかの芯が、最後の最後でずらされてしまう。


私としては、このストーリー全体の起想点は「仮想マシン」じゃないかなーと思っていたりする。
そこへ辿り着かせる為に紡ぎ出されたのが「天才」というモチーフで……と、最後まで読んでそう思えるのだが、その地点からここまでをあの文調の中持ってこられた力量に、私は羨望の眼差しを送らざるを得ない。


正体不明の「読ませる力」に取り込まれて、とにかく早く続きが読みたくなっている。
この力の正体は一体何なんだ。 っつーかどのへんをどう妬んでいいのかが正直判りません!! ボスケテ


てーかね、何つっても哀川さんでしょ、哀川さん。 もうね、大好き。


「思考しろ、そして気付けよ、お兄ちゃん。」


くぁーーっこいぃーーーーーー。