生きる根っこ

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

風のにおいと草のにおいと、ふくよかで暖かい安心感に満ちたお話。


ここに提示されることは皆、「今現在の私」からも「かくありたい私」からもかけ離れたことばかりだ。
だからこの作品にちりばめられた、朝はニワトリの卵をもらってスクランブルエッグを作り、温室のかわいい雑草に水をやり、ラベンダーの草むらの上にシーツを干し、草原の切り株に座って輝く風を感じるなどといった情景を読んで私が感じる安心感は、「観光」のようなものなのかもしれない。
遠くにありて思うもの、とでも言うのか。


それでもこれは、生き物である人間の、分かちがたい基本だと思う。
そうでなければ安心感を感じる道理がない。


デジタルが好きな私、緑が好きな私。
人間ってのは色々なことをするもんだ。


そして、最後におばあちゃんが教えてくれるのは、果てしない優しさと、人にあるべき暖かさ。